2003.12.20
「ファイト一発!」

会社の帰り道。

家まであと50mという所で

白い買い物袋を持ったオジイさんが歩いていた。

今にも倒れそうな足取りで。

というか、フラフラだ。

「大丈夫かぁ?」と思いながら

車を自宅の前に停車させ、家に入ろうとしたとき、

気になって振り返った。

俺 : 「あ・・・」

中腰のお爺さん発見。

ヒザに両手をつき、なんとかこらえている様子。

俺はどう見ても大丈夫ではないお爺さんに

「大丈夫かい?」と訪ねた。

オジイさんは虫の息の様な声で一言。

お爺さん : 「少し休ませてねぇ。」

俺 : 「大丈夫じゃなさそうだね。送ってくからちょっと待ってて。」

オジイさん : 「・・・(無言)。」

俺はお爺さんの横に車を付け、助手席のドアを開けた。

俺 : 「どうぞー。」

お爺さんは、栄養ドリンクの様なモノがたくさん入った買い物袋を

大事そうに抱え、ゆっくり車に乗り込み

ドアを閉めた。

が、しかし

力無く「半ドア」。

やり直し。

が、また力無く「半ドア」。

俺は、運転席から手を伸ばしドアを閉め直し

お爺さんが向かっていた方向に、車を発進させた。

すると

お爺さん : 「5丁目の○○です。」

どうやら俺はタクシーの運転手。

お爺さんの家に着くまで

お爺さんの近況などを聞きながら車を走らせた。

話によると、お爺さんは

昨日退院したばかりで

買い物をするために家を出たが、帰る力が残ってなかったらしい。

昨日退院したばかりのお爺さんが

こんな寒空のなか歩いて買い物をしている。

買い物袋の中身は、それは大事な物なのだろう。

目的地に到着し、車を停めた。

お爺さん : 「ありがとうございました」

と、白い袋から栄養ドリンクらしき物を2本取り出し

お爺さん : 「これ、どうぞ。」

と、俺に差し出した。

俺 : 「そんないいっすよ!そんなことしないで下さい。」

お爺さん : 「いいからどうぞ。」

とお爺さんは、大事そうに持っていた「リポビタンD」を

俺に手渡し車を降りた。

俺は頭を下げ、車を発進させた。

お爺さんは「ファイト一発!」出来ないほど疲れてたんだろう。

俺はそのまま家に帰り、1人で「ファイト一発!」してやった。

ありがとうお爺さん。