2003.12.31
「ガラスの難〜後半」

ガラスついでにもう一話。

「あなたはカラオケ屋の防音ガラスを割ったことがありますか?」

無論、俺はある。

俺が割ったガラス第1位が

カラオケ屋の防音ガラス。

ちなみに2位は車のフロントガラス(頭で)。

あれは高校3年。卒業を迎えた春。

同じバイト先だった仲間とカラオケ屋で卒業を祝う会。

十数人で開かれたその会は

思い思いの曲を披露し楽しみ、そして盛り上がった。

そして忘れもしない。

♪夢見る少女じゃいられない / By 相川七瀬

(サビ)「♪夢見る少女じゃいられない (HEY!!)」

俺は「相づち」を入れるために跳んだ。

(HEY!!)のところだ。

誰よりも高く。

誰よりも速く。

そして着地・・・

『グラっ・・・』

何か踏んだ。

酒も入っていたせいもあり

体勢を立て直す事ができずに、山下倒壊。

『ガッシャー!メリメリ!!』

背中に無数の痛みを感じた時にはもう遅かった。

俺の身体は防音ガラスを貫き

身体半分、入り口のガラスの壁に埋まった。

俺 : 「痛ッ・・・」

友達 : 「(キャー!ワー!)」

友達 : 「大丈夫!?」

もはやカラオケどころではない。

もはや卒業どころの話ではない。

友達に引き起こしてもらい俺は壁を抜けた。

背中には無数のガラスの破片。

みんなの顔が青ざめている。

もちろん俺も。

大事には至らなかった事を確認し

緊急会議。

「そのまま逃げる」という意見もでたが

ここは地元。

顔なじみの店だったので却下。

どうしようもなく、俺は正直に謝りに言った。

もちろんカラオケの店主カンカン。

俺、平謝り。

結果、

俺はカラオケ店から防音ガラスの弁償代として

金\40,000円を請求された。

当時、高校生の俺にはかなり痛い出費だ。

大学行ってる場合じゃないぞコラ。

バイトだバイト!

俺はめでたい卒業式の日に混乱した。

「やべぇ・・・マジどうしよう。」

家に帰り、親に打ち明ける。

俺 : 「・・(略)・・・・。どうしたらいいべ?」

父親 : 「何やってんだ!?」

当たり前だがこっぴどく怒られた。

俺は怒られるために告白したんじゃない。

そう!勇気を出して本題に入った。

俺 : 「お金貸してもらってもいいっすか?」

だが次の瞬間!親父の目が笑った。

親父 : 「お前は保険に入っているから大丈夫だ。」

俺 : 「え?」

俺 : 「何の?」

親父は微笑みながら説明する。

どうやら俺は昔からモノをよく割ったり壊したりしていたため

「子供が起こした事故の損害額が全額保証される保険」

みたいなものに入っていたらしい。

全額保証ですよ奥さん!

そんなステキな保険があるのも知らなかった。

だが何よりも

高校生にもなってそんな保険に入れられていたのには

さすがの俺もショックを受けた。

しかも役にたってるし。

嬉しいが、ちょっと恥ずかしい。

「背に腹は代えられねぇ!」

俺に迷いはなかった。

俺 : 「その保険の適用お願いします。」

親父はボソッと一言つぶやいた。

親父 : 「カラオケ屋に電話しろ。」

この時の親父は高倉健よりカッコ良かった。