2004.01.22
「市長賞」

帯広市の冬の一大イベント「帯広氷祭り」。

それには「雪像」を作って出品するコンクールがある。

俺達はそれに参加した。

今年で3年目。

氷点下15℃前後の気温の中、約2.5m四方の雪像を

人手だけで作り上げていく。

2002年。

最初に出場した年は男3人で参加。

何もわからないまま作り始めたが

「おー!すごいじゃん!」

「ウマイねぇ。そこ誰作ったの?」

と、周りからの声に俺達はやる気になった。

だが初めての出場ということもあり、とにかく作業に時間がかかる。

そして、それ以上に俺達は「凝り性」だった。

時計を見るたびに

「やべぇ!もう○○時だ。間に合わん!」

「全然進まん!」

「うわ!もう俺達しかいない・・・。」

他の参加者がいなくなってからも、夜を徹して作業を続けた。

そしてなんと言っても北海道の1月下旬。

なまら寒い。

「手がかじかんで動かん・・・」

「足痛ぇ・・・。もう感覚ないわ。」

「あー!もう帰りてぇ!」

悲鳴をあげながらも作業を続けた。

他の参加チームの作品の上手さに凹みながらも

俺達の初めての「雪像」が完成した。

審査当日。

俺達は、審査結果の連絡を待つ。

「入賞」。

総合順位7位。

初めての参加で受賞。

これが俺達に火を付けた。

「いける!」


そして2年目。

前年の辛い経験から

「今年もやる?」

「どうする?やめる?」

と弱気だったが

「どうせなら市長賞(最優秀賞)を獲ってやめてやろう。」

という声が。

「それ実現したらカッコイイね。」

「うん。カッコイイ。」

俺達は2回目の参加を決心した。

そして「市長賞」をとるために

前年よりも難易度の高い作品を制作することにした。

さらにメンバーも増え、戦力も強化。

「市長賞(最優秀賞)を獲って勇退する」

これをテーマに俺達は一つになった。

前年の経験から作業のスピードそのものは格段に上がった。

だが俺達は、相変わらず「凝り性」だった。

時計を見る度に

「終わらん・・・。」

「無理だ。間に合わん。」

それでもなんとか「形」にし、出品したが

「市長賞」を獲ることはできなかった。

結果、前年より順位は上げたものの、完成度が低く

総合4位。

「ちくしょう」


そして今年。

誰が何を言ったわけでもなく

俺達は集まった。

「市長賞」を獲るために。

そして今度こそ「勇退」するために。

前年よりも更にメンバーを増やし、俺達は9人になった。

雪像をつくるのにこの人数は決して多い人数ではない。

むしろ少ないくらいだ。

さらに作業の手順が良くなった俺達は順調に作業を進めていく。

最終日、それぞれの仕事を終え、俺達は会場に集まった。

19時30分。

最終日ということもあり、

みんな気合い十分で作品の仕上げにかかった。

作業開始から5時間。

午前0時。

会場設営の事務所にて一度休憩をとる。

凍えた身体を温めながら、これからの作業手順を確認。

友達 : 「(仕事まで)あと8時間しかない。急がなきゃ。」

俺 : 「8時間かぁ。間に合うかなぁ。ヤバイね。」

友達 : 「まず3時半までに○○を完成させて、それから全員で××を一気に仕上げよう。」

会場設営の係り : 「は?お前ら何時までやるつもりよ(笑)」

友達 : 「出来るまでです。」

たぶん係りの人は冗談にとらえていたが

それが現実となる。

休憩を終えた俺達は円陣を組み、気合いを入れた。

体育会系。

周りからすれば、「何してんだ?」って笑われてもおかしくないが

俺達は熱かった。

そして俺自身そういうの嫌いじゃない。

ビバ!男ノリ!

そして午前7時30分。

(全員) : 「終了!!」

俺達の作品は完成した。

この日、朝から仕事の人がほとんどだったが

誰1人欠けることなく最後までやり遂げた。

あとは審査結果の連絡を待つのみ。

「手応えは十分。」

「あれでダメな訳がない。」

そう言い聞かせて、こみ上げる不安を抑える。

そして

午前11時20分。

メンバーから携帯電話にメールが届いた。

「題名」の無いメールの本文に

「市長賞!」

とだけ書いてあった。

歓喜!