2004.01.31
「ラーメン道」

たまに通った道に、見知らぬラーメン屋がオープンしていた。

「とんこつラーメン ○○亭」

とんこつ好きの俺としては、行くしかない。

俺は何の迷いもなく、のれんをくぐった。

「いらっしゃいませ〜」

元気の良い店員の声が、まだ新しい店内に響く。

午後3時。

店には客は無く、カウンターでは記者らしき女性が、店主に取材をしている。

見るからにクセのありそうな、店主のオヤジ。

記者 : 「・・・そうですかぁ。では、こだわりなんかありますか?」

店主 : 「こだわりっていうか、うちは看板にも書いてあるけど『とんこつ』なのよ。」

記者 : 「はい。」

店主 : 「じゃーさ、豚骨ラーメンのスープは何色?」

記者 : 「え?色ですか?・・・白ですかね。」

店主 : 「そうだろう?でも、『豚骨=白』って誰が決めたの?」

記者 : 「え?」

店主 : 「今、カップラーメンやテレビで出ている豚骨スープは大体、白だろう?」

      「そのイメージがメディアから提供され俺達は生活している。」

      「時代が、そうさせてるのかもしれないけど、俺はそれに従う気はないんだよね。」

      「そう。うちの豚骨スープは白じゃないのよ。」

      「俺がラーメンをお客さんに出すと、お客さんは「あのー豚骨頼んだんですけど」って顔をするのよ。」

      「でも、俺の豚骨ラーメンはコレ。」

      「うちはこれで50年やってんのよ。今回、新しくここに店出したけど。」

      「まぁ、それがうちのこだわりかなぁ。」

長ぇ。

「長すぎるんだよ。そんな事どーでもいいから早くラーメン作れ!」

っと、口に出さずに思っていると

注文した「塩とんこつラーメン」が出てきた。

店主の取材に気を取られているうちに

他の店員がつくったらしい。

まぁ、いい。

あ。

本当にスープが白じゃない。

ごく普通の塩ラーメンの色だ。

俺は、店主のエラそうな口調の受け答えにイライラしながらも

ラーメンのスープをすくった。

『ズズズー、ゴクッ。』

ん?

『ズズズー、ゴクゴク。』

あれ?

なんじゃこりゃ?

豚骨の味がひとつもしない。

おやっさん。

ただの「塩ラーメン」だよ。

俺も、まんまと

「あのー豚骨頼んだんですけど」って顔をしてしまった。

取材を終えた店主が嬉しそうに俺を見る。

クソッ。なんかムカツク。

スープが白くないのは豚骨のスープを入れてないからではないのですか?

スープは色より味でしょう?

肝心の味だが、デパートで食べる「塩ラーメン」級の味だった。

たぶん二度とここの「のれん」くぐらんね。