2004.05.26
「クギカスタム」

天気がよい。

ここ数年特有の、「あわてんぼうの夏」がやってきた。

5月にしては暑い。

そして「夏本番!」とメディアが騒ぐ頃には、去っていってしまうのだろう。

それにしても天気がよい。

久々に愛車の洗車をした。

太陽を「これでもか!」と浴びながら、でかい鉄のカタマリを汗を流して洗った。

一通り洗い終え、ふと目にとまったリアタイヤ。

俺 : 「ん?なんだこれ?」

愛車のリアタイヤに小さく光る物体。

俺は近づき目を凝らす。

俺 : 「クギだ!」

大工もビックリなくらい完璧に刺さっているクギは

ちょっとした飾りにも見える。

クギカスタムだ。

だがそんなカスタムを頼んだ覚えも施した覚えもない。

俺 : 「抜かなきゃ。」

ここ最近のタイヤはほとんどチューブレスなので、クギが刺さったくらいではすぐにパンクする事ない。

それでも、もしこのクギが抜けてしまえば

俺の車はぎこちない動きで車道を走ることになるだろう。

パンク修理だけなら千円位で収まる。

給料日前でいくら金がない俺でもなんとかなる額だ。

俺は急いで近くのガソリンスタンドに車を持っていった。

俺 : 「すいません。パンク修理なんですけど。」

店員 : 「はい!ではこちらへどうぞ!」

店員の案内で俺は整備場へ車を動かした。

俺 : 「あのーこのタイヤにクギが刺さっちゃって。」

店員 : 「わかりました。見てみます。」

さわやかに対応してくれていた店員の表情が変わった。

店員 : 「あ〜。これは無理ですね〜。」

申し訳なさそうに店員はそう言った。

俺 : 「え?」

店員 : 「地面に接する所なら修理きくんですけど、このタイヤの角はできないんですよ〜。」

やっかいなことに「クギカスタム」は↓ここに施されていた。



修理不可能らしい。

タイヤを買い換えるしかないらしい。

俺 : 「そうなんだぁ。でもなぜこんなところに・・・。」

店員 : 「ですよねぇ。なかなか器用な。」

俺 : 「いや、それほどでも♪」

なんて冗談を交わしながら、「買い換えるといくら位かかるのか」と心配していると

店員がそれを察したのか天の声。

店員 : 「あのー、あんまり良くないですけど・・・」

俺 : 「え?なにか良い方法あります?」

店員 : 「チューブ入れます?」

俺 : 「チューブすか?」

店員 : 「はい。チューブ。」

俺 : 「あまり聞いたことないですね。」

店員 : 「はい。あまり言ったことないです(笑)」

タイヤを買い換える他にこのまま走る方法はそれしか無いらしい。

どうしようか迷っていると。

店員 : 「チューブだと2500円位でできますよ。」

俺の迷いは吹っ飛んだ。

俺 : 「お願いします。」

店員 : 「では店内でお待ち下さい♪」

そして店内で、先に待っていたおじいちゃんと一緒に「水戸黄門」の再放送を見ながら待った。

角さん : 「控えおろ〜!」

助さん : 「控えお・・・・」

店員 : 「山下様〜!お待たせしました。」

店員 : 「2500円になります。」

俺 : 「はい。ありがとうございました。」

俺は店員さんに心からお礼を言ってスタンドを後にした。



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