2005.07.08
「ナイスヤンキー」

久々に写真を撮りに出た。

早朝4時頃に街へ出て撮っていた。

いい感じの場所があったので、国道にかも関わらず

道路の脇に車を停めて、カメラ片手に被写体に向かって歩いていたら

背後から黒塗りのVIPカーが近づいてきた。

すると俺の近くで減速し

歩く速度に合わせて併走している。

『ん?』

俺はチラっと車を見たが

黒塗りなので中が見えない。

だが、知り合いでないことは確かだ。

『なんだ?』

俺は歩く速度を上げた。

黒塗りのVIPカーも速度を上げる。

『何用だ?』

俺は軽く走ってみた。

黒塗りのVIPカーも速度を上げた。

『何なのよ!?』

やがてゆっくりと窓が開いた。

俺は『来るのか!?』と心構えた。

中から現れたのはヤンキーみたいな兄ちゃんだ。

『やっぱり!!』

似合っていた。

”黒塗りのVIPカー”に最高に似合っている人が乗っている。

俺はジーンズのポケットに入っている財布の中身を計算した。

助けに来てくれそうな友達の顔を頭に浮かべた。

と同時に携帯電話を取り出した。

ヤンキーみたいな兄ちゃんは、オレンジ色の細いサングラスを少し下げて

俺に話しかけた。

ヤンキー : 「ガス欠かい?大丈夫?」

俺 : 「え?」

俺は、想像もしていなかった事態に戸惑った。

キョトンとしている俺に、ヤンキーみたいな兄ちゃんは続けた。

ヤンキー : 「車故障したの?」

ようやく事態を把握した俺は声高らかに答えた。

俺 : 「大丈夫!何ともないです。ありがとう!」

ヤンキー : 「そっか♪」

ヤンキーみたいな兄ちゃんは笑顔を見せ、ブォーっという音とともに走っていった。

親切なヤンキーだった。

俺はとっさに思い浮かんだ「ナイスヤンキー」って言葉に一人で笑ってしまった。

とても清々しい朝だった。





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